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「激痩せ」有名人が突きつける美と命のボーダーライン

有名人たちと『激痩せ』の複雑な事情

【有名人たちの「激痩せ」】

 2017年後半から翌年前半にかけて注目された、愛子内親王の激痩せ騒動においても、心配する声とともに、憧れ羨む声が聞かれた。また、メディアによっては「目を見張る〝スリム〟姿!」「いつの間にこんなおきれいに」と報じたが「どうして!?『摂食障害』の指摘も飛び出して」などとそれとなく病気扱いしたところもある。

 前者については、皇族への配慮に加え、痩せ=美という価値観に寄ったかたちだろう。一方、後者は「痩せすぎ=病的」という価値観から、その深層を推理した。雑誌『女性セブン』には宮内庁関係者によるこんな証言が。

「いちばん身近な〝お姉さま〟である佳子さまが『美しすぎるプリンセス』としてメディアで取り上げられたことも影響していると思われます。9月下旬、愛子さまは炭水化物を抜くダイエットを始められたそうです」

 これがエスカレートしたことについては「愛子さまは〝やり始めたらやる〟という性格で、頑固な面をお持ちです。雅子さまに似て完璧主義な部分もあり、結果が出るまでやらないと気が済まない」とのこと。こうした証言などをもとに、彼女の立場や環境によるプレッシャーやストレスを強調することで、激痩せの謎を分析してみせたわけだ。

 この状況は、宮沢りえのときに似ている。95年の激痩せ騒動の際、多くののメディアがいろいろ分析を試みた。こちらの場合も、立場や環境によるプレッシャーやストレスがけっこうわかりやすく、また、失恋という出来事などもあいまって、格好の素材だったのである。

 その後、ふたりは「激痩せ」状態ではなくなったため、メディアも世間も「めでたしめでたし」的な雰囲気に落ち着いた。ただ、ふたつの価値観のせめぎあいという問題は今も解決していない。

 宮沢はありがちなリバウンドを回避し「健康的な痩せすぎ」ともいうべき体型を長年保つことで、高い人気を維持していった。いわば「痩せ=美」を体現する女優の代表だ。かたや、愛子内親王はリバウンド以上と思われる変化をして、その体型が取り沙汰されることはなくなった。本人の心境はどういうものだろう。

 少なくとも、痩せ姫たちにとって、宮沢はリスペクトの対象だったりするが、愛子内親王は同情の対象だったりもする。体重が増えてよかったという、単純な話でもないのだ。

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宝泉 薫

ほうせん かおる

1964年生まれ。主にテレビ・音楽、ダイエット・メンタルヘルスについて執筆。1995年に『ドキュメント摂食障害―明日の私を見つめて』(時事通信社・加藤秀樹名義)を出版する。2016年には『痩せ姫 生きづらさの果てに』(KKベストセラーズ)が話題に。近刊に『あのアイドルがなぜヌードに』(文春ムック)『平成「一発屋」見聞録』(言視舎)、最新刊に『平成の死 追悼は生きる糧』(KKベストセラーズ)がある。ツイッターは、@fuji507で更新中。 


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  • 2016.09.10